人口減少や過疎化が進むなか、地域の魅力を再発見し、活気を取り戻す手段として「町おこし」が注目されています。地方では進学や就職を機に都市部へ人口が流出し、働き手不足や経済の縮小などの課題が深刻化しています。こうした状況を改善するためには、地方創生の取り組みが必要です。
しかし、「どのように町おこしをすればいいのか分からない」「本当に効果が出るのか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。実際には、地域資源を活かして成果を上げた事例が各地にあります。
本記事では、全国で実施している町おこしの事例16選を紹介します。自地域に合った取り組みを考える際に、ぜひ参考にしてみてください。
町おこしの事例16選

全国で行われた町おこしの事例を紹介します。
1.周遊型謎解きゲーム
株式会社IKUSAの「周遊型謎解きゲーム」は、特定のエリアを舞台に、参加者が物語の主人公となって謎を解き明かす体験型イベントです。地域の歴史や文化をストーリーに組み込むことで、「その土地ならでは」の付加価値を創出します。
愛媛県の「とべもり+エリア」では、複数の観光スポットが点在し、それらをいかに回遊させるかが課題でした。そこで、ストーリー形式の周遊型謎解きゲームを開催しました。謎解きという目的を作ることで、参加者は動物園やこどもの城といった各スポットを巡り、エリア全体の認知度向上につながりました。
参考:【開催事例】「とべもり+クエスト〜森に眠りし希望の宝~」愛媛県 | IKUSA.JP
2.戦国宝探し
株式会社IKUSAの「戦国宝探し」は、宝の地図を手掛かりに、謎を解きながら宝物を探す体験型ゲームです。地域の史跡や観光資源を「宝の地図」に見立てて探索させることで、普段は素通りされがちなスポットにもスポットライトを当て、参加者の「滞在時間の延長」と「ファン化」を促進します。
福井市の一乗谷朝倉氏遺跡では、遺跡の歴史的価値を幅広い層にどう伝えるかが課題となっていました。そこで、戦国宝探しを導入し、参加者が謎解きを楽しみながら自然と遺跡や博物館を巡り、地域の歴史を自ら発見できるような仕組みを構築しました。エリア内の飲食店をヒントとして活用することで、ゲームの合間に地元の食事を楽しめる動線を設計しているのも特徴です。
参考:【開催事例】「戦国宝探しin一乗谷朝倉氏遺跡 不思議な夢と石の声」福井市様 | IKUSA.JP
3.保育園留学(北海道厚沢部町)
保育園留学は、「子育ても仕事も全力でやりたい」という都市部の親の願いと「人口減少が進む地域社会を持続可能なものにしたい」という地域の想いから生まれた町おこし事業です。他地域から家族で訪れて1~2週間滞在し、子どもが保育園に通います。
北海道の厚沢部町では「世界一素敵な過疎のまち」を掲げ、2021年から保育園留学を始めました。家族で滞在できるように生活必需品が揃った宿泊施設があり、リモートワークの環境も整っています。ジャガイモの収穫体験や手作り石窯ピザ体験など、北海道ならではの体験ができる点も魅力です。
地域経済効果は一家族あたり20万円~40万円で、なかには移住を選択するケースも生まれています。一時的な観光ではない、持続可能な地域振興のモデルケースといえます。
参考:過疎のまち厚沢部町を、子育て家族が訪れる地域へ 認定こども園はぜる|保育園留学
4.アニメ「らき☆すた」の聖地巡礼(埼玉県久喜市)
アニメ作品を活用した「聖地巡礼」による地域振興を行ったのが埼玉県久喜市鷲宮地区です。2007年4月に放送開始したアニメ「らき☆すた」を機に、オープニングの舞台となった鷲宮神社へ多くのファンが訪れるようになりました。
当時、地域には「急増する若年層の来訪者にどう向き合い、地域振興につなげるか」という課題がありました。そこで、商工会を中心に展開したのが、ファンを「一過性の観光客」ではなく、「地域をともに作る仲間」として歓迎する戦略です。
地元商店でのグッズ開発や、伝統的なお祭りに「らき☆すた神輿」を登場させるなど、アニメの世界観と地域文化を融合させました。この取り組みは放送終了から15年以上経った今も根付いており、キャラクターの誕生日イベントや初売りには、現在も多くのファンが訪れ続けています。
参考:ゼロからレジェンドへ。アニメ聖地巡礼で地域振興の先駆者「久喜市鷲宮」と「らき☆すた」の取り組み|外務省
5.日本一の星空(長野県阿智村)
日本一星空がきれいな村といわれている阿智村は、星空を観光資源として活用し、町おこしを成功させています。豊富な温泉資源がありながら、周辺地域との差別化が難しく、宿泊客の呼び込みに苦慮していた村は、夜のスキー場を活用した「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」を企画しました。ナイトツアーでは、全長2,500mのロープウェイで標高1,400m地点まで登り、街の光が届かない場所で星空を眺めるという体験型の観光をブランド化しました。
また、夜の集客を温泉街の宿泊へとつなげるため、「ナイトツアーチケット付き宿泊プラン」を展開し、昼の時間帯も川沿いでのBBQやオリジナルアクセサリー作りなど、体験メニューを充実させた点も特徴です。
参考:~日本一の星空の村 長野県阿智村~南信州 昼神温泉公式観光サイト
6.レタス生産のブランド化(長野県川上村)
長野県川上村は、立地条件とITを戦略的に組み合わせ、レタスのブランド化に成功した村です。まず、高品質なレタスを安定供給するための用水整備を進めました。そのうえで、東京・名古屋・大阪という大都市圏の中間地点という利点を活かすため、独自の情報戦略を導入しました。具体的には、市場の動きを各農家へリアルタイムで配信するという情報ネットワークを構築し、需給に合わせた戦略的な出荷体制を整備したのです。また、台湾や香港への独自ルートを開拓し、輸出にも積極的に取り組んでいます。
この結果、農家一戸当たりの販売額が2,500万円を超え、約40年で農業所得を約3.8倍にまで引き上げました。
参考:産地形成とブランド化を通じたレタスで稼ぐ村づくり(PDF)
7.田んぼアート(青森県田舎館村)
青森県の中央・津軽平野の南側に位置している青森県田舎館村は、田んぼアートで町おこしを行っています。この町おこしの特徴は、景観作りだけではなく、色の異なる複数の稲を精密に植え分ける高度な農業技術を観光資源へと転換した点にあります。
見頃は7月中旬頃から8月中旬にかけて、年間30万人以上の観光客が訪れます。近年では雪原に模様を描く「冬の田んぼアート」も展開しており、稲作期間外の冬場にも集客の仕組みを作ることで、季節を問わず地域活性化を促進しています。
8.ふらっと美山(京都府美山町)
京都府美山町の「ふらっと美山」は、地域のライフライン消失という危機を住民がチャンスに変えた例です。
2002年、地元商店を運営していたJAの撤退が決まり、買い物場所が失われるという村の存続に関わる事態に直面しました。これを受けた住民たちは共同出資によって運営組織(現在の株式会社ネットワーク平屋)を設立し、自分たちで店舗運営を引き継ぎました。そして、単なる商店ではなく地域の魅力を発信する「特産品の直売所」として再生させたのです。
現在は、新鮮な農産物に加え、濃厚な味わいで知られる「美山牛乳」を使ったソフトクリームや乳製品、地元の素材を活かした「おやき」などの加工品販売に注力しています。その結果、売上の約8割を地域外からの顧客が占めるようになり、外からお金を呼び込んで地域を潤す仕組みを作り上げました。
ネットショップ「美山ごちそうの森」での全国展開も含め、年間20万人を超える観光客を呼び込み、集落の雇用維持と持続可能な経済循環を支えています。
参考:地方創生 事例集(小さな拠点・地域運営組織版)|内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局|内閣府地方創生推進事務局(PDF)
9.明日香村で進める連携の町作り(奈良県明日香村)
奈良県明日香村では、貴重な歴史的風土を保存しながら地域の活力を取り戻す、保存と活性化の両立を目指す取り組みを行っています。このプロジェクトの大きな特徴は、村単体だけでなく、民間企業(長谷工コーポレーション)や教育機関との大規模な連携体制にあります。
村では、観光客が昭和57年をピークに減少し、その大半が日帰り客でした。そこで、空き家を活用したゲストハウスの整備や民家ステイ(民泊)の受け入れを強化し、観光だけでなく「村の暮らしを体験する」という新たな価値を提案しました。その結果、現在では教育旅行だけで年間6,000泊以上の宿泊需要を創出することに成功しました。
参考:明日香村 & 長谷工コーポレーション 明日香村で進める連携のまちづくり|第2回橋本市都市計画タウンミーティング(PDF)
10.歴史町作り計画(滋賀県長浜市)
滋賀県長浜市は、城下町や宿場町としての歴史的風景を活用し、衰退した中心市街地を年間200万人以上が訪れる観光地へと復活させた町おこしの事例です。
昭和50年代、長浜の中心市街地は「1時間に人4人と犬1匹しか通らない」と言われるほど衰退していました。この危機的な状況に対し、市は「黒壁ガラス館」のオープンを皮切りに、歴史的建造物の修理や町並みの整備を行いました。
秀吉時代から続く伝統行事「長浜曳山祭」の保存や伝承にも注力し、歴史と観光を掛け合わせた独自の魅力を構築し、現在ではユネスコ無形文化遺産の登録も目指しています。
11.水木しげるロード(鳥取県境港市)
鳥取県境港市の「水木しげるロード」は、境港市出身の漫画家・水木しげるの作品「ゲゲゲの鬼太郎」の世界観を街全体の観光資源に活用した事業です。
約800mにわたるメインの商店街には、177体もの妖怪の銅像が並んでおり、全国から訪れるファンを魅了しています。この施策の特徴は、ほぼすべての店舗が妖怪をテーマにしたサービスを展開していることです。これにより、街全体がテーマパークのような一体感を生み出しています。
2021年には大規模なリニューアルが実施され、夜間の魅力を高めるための新たな演出が導入されました。50台以上のプロジェクターを用いて、夜の道路に妖怪たちの影絵を映し出したり、幻想的なイルミネーションを施したりすることで、昼夜を問わず観光客が賑わう仕掛けを作り上げました。その結果、リニューアル初年度の一次経済波及効果は250億円超を記録しています。
12.真庭市のバイオマス事業(岡山県真庭市)
岡山県真庭市は、1990年頃に林業の衰退や過疎化を打開すべく、地域の資源を最大限に活用した「バイオマス事業」による町おこしに取り組んでいます。バイオマスとは、生物資源を意味する「バイオ」と量を意味する「マス」を組み合わせた言葉で、一般的には植物などの生物から生まれた再生できる資源を指します。
真庭市は、市域の約79%を森林が占めるという特性を活かし、山に放置されていた木材などを燃料として発電を行う仕組みを整えました。これにより、外部に依存しないエネルギーの地産地消と、林業の再生を同時に実現させています。また、実際の現場を学べる「バイオマスツアー真庭」をパッケージ化し、これまでに約800名がツアーへ参加しています。
多角的な取り組みにより、林業と観光産業が活性化したことで、地域全体で約52億円もの付加価値額が増加するという経済効果が生まれています。
13.隠岐島前高校の島留学(島根県海士町・西ノ島町・知夫村)
島根県の離島にある隠岐島前高校は2008年から島外の生徒を積極的に受け入れ、多様性を尊重する学校作りを実践しています。同校は、島の人口減少により生徒数が減り、高校そのものが存続の危機に直面していました。この深刻な状況を受け、島外への人口流出を食い止め、再び若者の集まる場所にするために、官民一体となった教育プロジェクトを立ち上げたのです。
学習面では少人数の習熟度別指導を行っており、1学年約50人の生徒を習熟度別に3~4クラスに編成し、一人ひとりの理解度に合わせた丁寧な指導を実施しています。また、多様性を認め合う人間関係作りにも注力しており、地域との交流も積極的に行っているのが強みです。
教育プロジェクトは着実に実を結び、2007年では45%だった地元中学からの進学率が、2015年には77%へ上昇しました。現在では、生徒の3分の2以上が全国各地から集まった「島留学生」で占められており、入試倍率が2 倍を超える年もあるほどの人気校へと成長しています。
14.サテライトオフィス誘致(徳島県神山町)
徳島県神山町では、全域に整備された高速ブロードバンド環境と豊かな自然を武器に、首都圏のIT企業などを次々と誘致しています。このプロジェクトの特徴は、企業の拠点を移すだけでなく、古民家や蔵を改修した「サテライトオフィス」という働く場を提供している点にあります。
こうした環境を整えることで、移住や定住を促進し、これまでに11の企業が進出しました。結果的に、地元には新たな雇用が生まれ、昭和45年以来、初めて転入者が転出者を上回る「社会増」を達成しました。
参考:日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」(NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町))|総務省
15.空き家再生プロジェクト(広島県尾道市)
広島県尾道市では、市とNPO法人が連携し、坂道の多い街特有の「空き家問題」を移住促進のチャンスへと転換させています。
放置され荒廃が進んでいた昭和初期の民家を、住宅や店舗、ギャラリーとして活用し、景観保全と地域の活性化を実現しました。建物を直すだけでなく、街の景観保全と移住者のニーズをマッチングさせる「空き家バンク」の仕組みを構築し、これまでに150軒以上の空き家が成約に至っています。
移住者が増えたことで商業や観光の活性化にもつながり、歴史的な町並みを守りながら新しいコミュニティを育む、持続可能な町おこしの形を示した事例です。
参考:空き家の再生と活用を通した地域の活性化~空き家バンクと空き家再生活動との組合せ~広島県尾道市 空き家再生プロジェクト|国土交通省
16.馬路村のゆずブランド戦略(高知県馬路村)
高知県馬路村は、特産の「ゆず」を徹底的にブランド化し、年間売上約28億円を達成しました。
1980年代、村は生き残りをかけて、ぽん酢しょうゆ「ゆずの村」やドリンク「ごっくん馬路村」といった加工品を次々と発売しました。戦略のポイントは、村の子どもやお年寄りを起用した温かみのある広報活動にあります。村の空気感そのものを商品に乗せて発信したことで、全国にファンを作ることに成功しました。このブランド戦略は、村の雇用者数を4倍以上に増やしただけでなく、村の温泉施設への宿泊客も増加させています。
参考:ユズ商品とともに「馬路村」の情報を発信した観光振興 馬路村|国土交通省
まとめ

本記事では、町おこしの事例について紹介しました。町おこしは人口減少や産業の衰退といった課題に対し、地域資源や特色を活かして解決を目指す取り組みです。地域ならではの強みを活かしながら産業をブランド化したり、デジタル技術を導入したりするなど、方法は多岐にわたります。
町おこしを行う際は、地域の課題や特性に合わせて考えることが重要です。持続可能な地域作りを実現するためにも、今回紹介した事例を町おこしに役立ててみてください。

