滞在型観光とは、観光スポットを周遊するのではなく、一定の地域に宿泊してその土地の文化や食事を楽しむ旅行の形態です。地域の魅力に深く触れられるため、再訪や長期滞在などファンやリピーターの獲得につながります。
本記事では、滞在型観光の事例20選を紹介します。多くの来訪者を呼び込む街づくりを目指す方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事に記載の情報は2026年6月時点のものです。公式サイトにて最新の情報をご確認ください。
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文化・暮らしを活かした滞在型観光の事例6選

まずは、その土地に根付いた文化や生活を観光資源とする滞在型観光の事例を紹介します。
【京都府】伊根町 舟屋の里
約230軒の舟屋群が並び、国が歴史的・文化的に価値が高いと認めた「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されている京都府伊根町では、「暮らすように旅する」をコンセプトに、伝統的な舟屋の建物形式を残す宿泊施設を用意しています。周囲の飲食店や住民と連携しながら、海上住居が並ぶ全国的にも珍しい風景、美しい海、新鮮な魚介を観光資源に、伊根の魅力をじっくり伝える滞在スタイルを提供しています。
この事例のポイント
- 町の伝統的な建物を宿泊施設に
- 住民や周辺の飲食店と協力して地域の魅力をじっくりと伝える
公式サイト:伊根町観光協会
【兵庫県】丹波篠山 集落丸山
160年以上続く農家集落「集落丸山」では、 2009年に空き家を再生して民泊営業を開始しました。集落内にはフランス料理やそば懐石の店もあり、景色・宿・食を揃えています。薪割りやピザ窯体験の他、ホタル観察、筍掘りなど季節限定のプログラムも用意し、昔と変わらない静かな村で暮らす時間を提供しています。民泊をきっかけに存続が危ぶまれていた集落に活気が戻り、農村再生のロールモデルとして注目されています。
この事例のポイント
- 空き家を再生して民泊営業を開始
- 集落内で宿と食、体験を揃える
- 都会にはないプログラムで、何もない村で過ごす時間に特別感を持たせる
公式サイト:集落丸山
【山梨県】恵林寺 ZEN&BED望月庵
環境省では、インバウンド需要の高まりを背景に、歴史的な観光資源を活用した「泊まって楽しむ体験型コンテンツ」の開拓を進めています。文化財の保存や地域の活性化にもつながるとして、注目されているのがお寺の宿坊に泊まる「寺泊」です。その一例である武田信玄ゆかりの寺「恵林寺」では、住職が庵として使用していた日本家屋を客室に改装し、坐禅や精進料理など、自分自身と向き合える旅を提供しています。
この事例のポイント
- インバウンド需要や文化財の保存のためお寺を宿泊施設に
- 坐禅や精進料理など独自のプログラムを提供
公式サイト:ZEN&BED 望月庵
【大阪府】東大阪市 セカイホテル大阪布施
東大阪市のみやこ町商店街は、空きテナントや空き家を客室にリノベーションし、周辺の飲食店や銭湯と提携して商店街全体をホテル化しました。レトロ・ローカルを好むミレニアル世代・Z世代をターゲットに、地域の日常を体験として提供しています。
地元の人も観光客を温かく迎え入れ、自然と会話が生まれるような交流が生まれています。2025年度には年間の宿泊客数1万人を超える人気コンテンツに成長しました。
この事例のポイント
- 空きテナントを客室化し、商店街全体をホテルに
- レトロを好む若い世代をターゲットに、商店街の日常を体験として提供
- 一歩踏み込んだ交流により、観光客と地元住民の双方が優しくなれるサイクルが生まれる
公式サイト:セカイホテル大阪布施
【奈良県】天川村 洞川温泉
修験道の行者の宿場町として栄えていた奈良県の洞川温泉は、ノスタルジックな町並みが人気の観光地です。吊り橋のある渓谷や鍾乳洞など村内に見どころが多く、連泊する旅行者も多く見られます。2024年には観光拠点となる「洞川温泉ビジターセンター」を開業し、ゲストハウスの運営も開始するなど、長期滞在を見据えた取り組みに力を入れています。
この事例のポイント
- 都会にはない情緒ある街並みを観光資源に
- 観光の拠点となるビジターセンターや長期滞在向けのゲストハウスを整備
- 村内に点在する見どころを整備し、滞在を延ばす仕組みづくり
公式サイト:洞川温泉観光協会
【京都府】美山かやぶきの里
茅葺き屋根を多く残す京都府南丹市の「かやぶきの里」では、茅葺き屋根の古民家を宿泊施設として整えました。1日1組限定の一棟貸しスタイルで、周りを気にせずリラックスできる旅を提供しています。美山牛乳やジビエなど豊かな食と、地元ガイドによる森の散歩・トレッキングなどのアクティビティも用意し、2021年にはベスト・ツーリズム・ビレッジ(※)に選出されています。
※ベスト・ツーリズム・ビレッジ……国連世界観光機関(UNWTO)が、観光を通じた農村の持続可能な発展を評価して認定する賞です。
この事例のポイント
- 日本の原風景が残る茅葺き屋根の古民家を宿泊施設に
- ジビエや豊かな自然も観光資源に
- 一棟貸しでのんびりと里山の生活を満喫できる旅を設計
公式サイト:かやぶきの里
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豊かな自然を活かした滞在型観光の事例6選

次に、豊かな自然を観光資源とした滞在型観光の事例を紹介します。
【千葉県】かつうら海中公園滞在型観光施設eden
サーフスポットとして栄えていた千葉県勝浦市ですが、近年の観光ニーズの多様化に対応しきれず観光客が減少していました。そこで2022年7月には、海中公園内に天候や季節を問わず楽しめる複合施設をオープンしました。美しいリアス式海岸を眺めながら、天然温泉やサウナ、地元食材を取り入れた食事を楽しめる場所として設計されています。
今後は近隣エリアでの宿泊施設の建設も視野に、地域全体を巻き込んだ総合的な再生を目指しています。
この事例のポイント
- 季節や天候に左右されない観光流入が見込める施設を建設
- 自然が豊かな海中公園内で、温泉やグルメを楽しめる施設に
公式サイト:eden
【鹿児島県】屋久島
鹿児島県の屋久島町では、「もう一泊したい」と感じさせる旅行商品を作成・PRする旅行業者に対し、一部経費の助成を開始しました。島内には長期滞在に向いたキッチン付きの民宿や貸別荘、ゲストハウスが整備され、2~3泊の連泊ツアーも多く組まれています。
世界自然遺産に登録された豊かな自然の中でのトレッキングや、注目のウォータースポーツ「SUP(スタンドアップパドルボード)」などのアクティビティをはじめ、グルメや島民とのふれあいを通して島の魅力を伝えています。
この事例のポイント
- 豊かな自然でのアクティビティや島民とのふれあいを観光資源に
- 自治体が連泊を想定した旅行商品を作成する業者への助成を開始
- 長期滞在に向くキッチン付きの宿泊施設を整備
公式サイト:屋久島観光協会
【沖縄県】大宜味村 滞在型交流プラン
貴重な生物が生息し、自然が色濃く残る沖縄県北部の大宜味村は「やんばる」と呼ばれる地域です。NPO法人「おおぎみまるごとツーリズム協会」では、世界自然遺産に登録された豊かな森をネイチャーガイドとともに巡るトレッキング体験を用意しています。
地元食材を活かした食事や長寿の里での長寿交流も用意し、自然・食・人との触れ合いを通してやんばるの恵みを伝えています。
この事例のポイント
- 世界自然遺産にも登録された森を巡る滞在型交流プランを用意
- 自然や食、人との触れ合いを通してこの地域の魅力を伝える
公式サイト:よんな〜沖縄 アグリ&アドベンチャートラベル in大宜味
【島根県】海士町 ホテルEntô
島根県隠岐諸島のひとつである海士町は、老朽化した島唯一のホテルをリニューアルし、地質や地形など、その土地の大地の歴史を学べる場(ジオパーク)づくりの拠点としました。
株式会社海士が運営するホテル「Entô」が2021年に誕生し、目の前に広がる大自然を堪能できる他、館内の展示施設で島の成り立ちや文化を伝えています。島民の温かさも付加価値とし、ホテルのリニューアル前に比べ20~30代の若年層の来訪が増加しています。
この事例のポイント
- 手付かずの自然を活かして地方創生を目指す
- 旧ホテルの老朽化を、島の新たなブランディングの機会に
- 展示施設を用意し、島の文化を伝える
公式サイト:Entô
【徳島県】祖谷落合集落
集落全体が重要伝統的建造物群保存地区に選定されている徳島県三好市の祖谷は、日本三大秘境のひとつに数えられており、日常から切り離されたような時間が過ごせる場所です。
祖谷落合集落では空き家を活用したゲストハウスを整備し、地元のお母さんが作る郷土料理や伝統の蕎麦打ちで地域の魅力を伝えながら、静かな里山での滞在を提供しています。
この事例のポイント
- 空き家を改装した宿泊施設で里山の暮らしを提供
- 地元の魅力が伝わる体験を提供
公式サイト:大歩危祖谷温泉郷
【広島県】ガンツウ
ツネイシ ランド&シー株式会社では、「瀬戸内の海は、海から見るのが一番美しい」と、海に浮かぶ船型の小さな宿「ガンツウ」の運営を始めました。2~3泊で瀬戸内海に浮かぶ島々の間をゆっくり周遊し、瀬戸内の文化や歴史、自然、食を楽しめます。食事は「好きなものを好きなだけ」を基本とし、その日に上がった魚を楽しめるなど船上ならではの食体験も提供しています。
この事例のポイント
- 瀬戸内の魅力が一番伝わる海の上の宿を運営
- 海上ならではの食体験や船旅で瀬戸内の良さを伝える
公式サイト:ガンツウ
地域のグルメを活かした滞在型観光の事例4選

続いて、新鮮な魚介や地酒など、地域のグルメをメインにした滞在型観光の事例を紹介します。
【島根県】WINDY FARM ATMOSPHERE
2023年5月、出雲市の湖陵西海岸に、株式会社バルニバービが手掛ける滞在型施設がオープンしました。「食をベースとした地方創生プロジェクト」として地産地消の薪火レストランを備え、さらにジップラインや芝生の滑り台など自然を活かしたアクティビティも整えています。
ホテルは美しい海岸線沿いの断崖に埋まるという珍しい設計で、ジャグジー付きのテラスから海と空を眺める、贅沢感のある滞在を提供しています。
この事例のポイント
- レストランやホテル、アクティビティを備えた複合施設
- 地元食材を活かしたレストランで唯一無二の食体験を提供
- 美しい海と空を眺められる、崖と一体化したホテルも特徴的
公式サイト:WINDY FARM ATMOSPHERE
【新潟県】長岡市 VILLA VOIX
多くの鮮魚店が並ぶ新潟県長岡市の「寺泊魚市場」は人気の観光地ですが、遠方からの来訪だと鮮魚の持ち帰りが難しく、滞在につながらないという課題がありました。そこで株式会社寺泊BASEでは、購入した魚を調理できるキッチンを完備した、地域初のプライベートリゾートホテルを開業しました。
地元シェフの出張サービスなど地域のファンを作るサービスも用意し、日常から離れてゆっくり過ごす「リトリート」から、仕事をしながら旅をする「ワーケーション」までさまざまな滞在ニーズに応えています。
この事例のポイント
- 購入した鮮魚を調理できるキッチン付きの宿泊施設を開業
- リピーターを獲得できるサービスを用意
- リトリートやワーケーションなど多様な滞在に対応
公式サイト:VILLA VOIX
【北海道】余市ヴィンヤードグランピング
国内有数のワイン用ぶどうの産地である北海道余市ですが、家族経営のワイナリーが多く、見学の要望に手が回せない状態でした。そんななかピエス株式会社は、余市のワインやウイスキーを飲み放題で提供するグランピング(テントやコテージに宿泊しながら自然を楽しむ、快適さを重視したキャンプのスタイル)施設を開業しました。余市の食材を楽しめるBBQプランもあり、「現地でワインと地域食材を一緒に楽しみたい」という来訪者の要望に応えています。
この事例のポイント
- 特産品であるワインやウイスキーを飲み放題で提供するグランピング施設を開業
- ワインと地域食材を一緒に楽しめるBBQプランを用意
公式サイト:余市ヴィンヤードグランピング
【福岡県】うきは酒宿いそのさわ
1893年創業の老舗酒蔵「いそのさわ」では、日本酒離れの影響を受けて経営が困難になるなか、新たなビジネスとして築130年の家屋をリノベーションした宿泊施設の運営を開始しました。日本酒を飲み放題で提供し、近隣の飲食店とも新たな関係を築きながら、地元食材を使用したおつまみも用意しています。
チェックイン(精米)からチェックアウト(出荷)まで、宿泊者が酒米になりきって過ごすというユニークなコンセプトも話題になり、2022年には地方創生大賞を受賞しています。
この事例のポイント
- 日本酒離れが進み経営難のなか、新たなビジネスとして宿泊を打ち出す
- 宿泊者が酒米になるというユニークなコンセプト
- 地元食材のおつまみを提供し、近隣の飲食店と新たな関係を構築
公式サイト:うきは酒宿 いそのさわ
農業・産業を活かした滞在型観光の事例4選

最後に、農業体験や漁業体験など、農業や産業を観光資源にした滞在型観光の事例を紹介します。
【鹿児島県】天城町 追い込み漁体験
世界自然遺産にも登録されている鹿児島県の徳之島・天城町では、「日常の観光化」をテーマに、再生した古民家での民泊や、魚を浅瀬に追い込んで捕まえる伝統的な漁法「追い込み漁」の体験を実施するなど、埋もれていた町の魅力の発掘に取り組んでいます。
今後の継承のため島人が直々に漁法を教える取り組みは、持続可能な町づくりとして評価され、2024年にベスト・ツーリズム・ビレッジに認定されました。
この事例のポイント
- 再生した古民家や追い込み漁で埋もれていた町の魅力を伝える
- 島の漁師が直接漁を教えて次世代に受け継ぐ、持続可能な町づくり
公式サイト:伝泊
【兵庫県】はたけのリゾート 燦燦Villa
パソナグループ関連会社で農業支援を行う「パソナ農援隊」は、農業の入り口になるよう、瀬戸内海に浮かぶ淡路島で農業体験ができる宿泊施設を運営しています。国内外9組の建築家がデザインした個性豊かなヴィラに滞在しながら目の前の畑で収穫し、とれたての旬の野菜を味わえるのが特徴です。
肩肘を張らずに農業に触れる体験を通して食や自然の大切さを伝え、農業に関心を持つ人を増やしています。
この事例のポイント
- 農業に関わる入り口となる滞在型施設
- 気軽に農業に触れる体験や野菜が主役の食事を通し、農業に関心を持つ人を増やす
公式サイト:はたけのリゾート 燦燦Villa
【千葉県】クルックフィールズ
千葉県木更津市の「クルックフィールズ」は、約9万坪と広大な敷地に酪農場や有機農園、アート作品、宿泊施設を備えたサステナブルファーム&パークです。太陽光発電や家畜の排泄物の堆肥化など、環境に配慮した循環型の仕組みを取り入れています。
牧場で採れたミルクや卵を使った製品を味わい、動物の赤ちゃんと触れ合える他、生きる力を養う学校や自然観察など教育的なプログラムもあり、食や自然に触れながら命のつながりを学べます。
この事例のポイント
- 酪農場や有機農園、宿泊施設を備えた施設
- 循環を整えたサステナブルなファームで、環境に配慮した取り組みを学習できる
- 動物との触れ合いや食の体験を通して、命のつながりを学べる
公式サイト:クルックフィールズ
【山形県】やまがた的グリーンツーリズム
「山形県グリーン・ツーリズム推進協議会」では、農山漁村地域での自然や文化、人々との交流を楽しむ滞在を推進しています。農家民泊を営む宿が集まり「農家のお宿の会」を発足するなど、地域で協力して受け入れ体制を整えているのも特徴です。ぶどうやリンゴの収穫、そば打ちや味噌づくりなどの加工、田植え・稲刈りなど、ありのままの田舎暮らしで来訪者をもてなしています。
この事例のポイント
- 地域で協力して受け入れ体制を整える
- 収穫や農業体験など、ありのままの田舎暮らしで来訪者をもてなす
公式サイト:やまがた的グリーンツーリズム
まとめ

本記事では、滞在型観光を促す宿泊施設や地域の取り組みの事例を紹介しました。
さまざまな地域で、独自の観光資源の魅力を伝える滞在型の観光を提供しています。通過型の観光ではなく長時間の滞在を促す観光プランにすることで、来訪者の消費を促し、地域経済を活性化させます。地域のリピーターやファンを増やすためにも、宿泊を伴う観光を強化してみてはいかがでしょうか。
※本記事に記載の情報は2026年6月時点のものです。公式サイトにて最新の情報をご確認ください。
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