現代のビジネスにおいて、多くの収益を生み出しているIPビジネス。長期的に収益を獲得し続けるだけではなく、自社のブランド強化にもつながります。
本記事では、様々な形態があるIPビジネスについて、主な収益化モデル、主要分野や成功例、メリットやデメリット、成功に導くポイントを解説します。
IPビジネスとは?

「IPビジネス」のIPとは、「Intellectual Property」の略で、日本語にすると「知的財産」という意味です。発明や創作物など、人間の知的な活動によって生み出されたものの中には、財産的に価値のあるものがあり、それらが知的財産と呼ばれています。この知的財産を活用したビジネスがIPビジネスと呼ばれています。
また、法律によって利益を得る権利が保護された知的財産があり、それは以下のような種類があります。
- 著作権
- 特許権
- 意匠権
- 実用新案権
- 商標権
一つずつ解説します。
著作権
著作権は、小説や漫画などの文芸、学術研究、絵画や彫刻などの美術、音楽、映像などの著作物を保護する権利を指します。
著作権の概念は、活版印刷技術が広まりはじめた15世紀に生まれました。活版印刷技術により、無断で複製が出回ったことから製作者を保護する必要がでてきたためです。1970年にイギリスにおいて著作権法がはじめて明文化されました。
著作権は、国に登録しなくても、創作したその瞬間から生まれる権利です。また、ある人が先に創作したものであっても、後から別の人が創作した場合、双方の著作者の権利が保護されます。著作権は永久のものではなく、保護期間は原則として著作者の死後70年です。
特許権
特許権は、自然法則を利用した、新規の高度で産業上利用可能な発明を保護する権利を指します。特許権を得るためには、特許庁への出願が必要です。審査の結果、認められると、特許権を取得できます。
特許権の効力は原則として、特許出願を行った日から20年間です。
意匠権
意匠権は、物、建築物、画像などのデザインを保護する権利を指します。物の全体のデザインだけではなく、部分的な特徴のあるデザインも対象となります。
意匠権の効力は、原則として、特許出願を行った日から最長で25年間です。
実用新案権
実用新案権とは、発明ほどの高度な技術は必要がない、自然法則を利用した新規の考案を保護する権利のことを指します。日常生活を便利にするようなちょっとした発明のことで、たとえば、ペットボトルのキャップ、シャープペンシルに付いた消しゴムなどです。
実用新案権の効力は原則として、特許出願を行ってから10年間です。
商標権
商標権とは、商標のことです。事業者が取り扱っている商品やサービスの名称やマークなどを保護する権利のことを指します。
商標権の効力は原則として、設定登録の日から10年間です。また、商標権は更新することで半永久的に維持できます。
IPビジネスにおける主な収益化モデル

知的財産を活用したビジネスモデルであるIPビジネスを収益化するには、主に以下の3つの販売方法があり、自社の強みやリソースを活かせる方法を選択することが大切です。
- コンテンツ販売(メディアミックス)
- ライセンス販売
- ノウハウ・技術販売
3つの販売方法は、それぞれどのようなものなのか、収益性やリスクなどを解説します。
コンテンツ販売(メディアミックス)
IPビジネスにおいて最も代表的な収益化のモデルはコンテンツ販売です。メディアミックスとも呼ばれており、自社のIPを活用して、さまざまな商品やサービスを自社で販売します。例としては、キャラクターグッズ、ゲームやアニメ化、Blu-rayの販売などがあげられます。
コンテンツ販売は、自社で直接作り販売するため、利益率が高いことがメリットです。ただし、コンテンツを作成するために費用がかかるため、収益が出なかった場合は、リスクは大きくなります。また、在庫を抱えてしまうリスクや、流通網の確保が難しいこともあります。
ライセンス販売
他社に自社のIPの使用許諾をすることで、ロイヤリティ収入を得るのがライセンス販売です。ロイヤリティの比率は商品や業界によって異なりますが、一般的な相場は5~15%です。
ライセンス販売は、自社でサービスや商品を作らないため、その分、リスクは低いというメリットがあります。また、場合によっては、大きな収益拡大も見込めます。
ノウハウ・技術販売
ノウハウ・技術販売は、これまで自社で培ってきたノウハウや技術を体系化して、コンサルティングサービスや教育プログラムとして展開し、販売します。継続的に収益を得られることが大きな特徴で、追加投資を抑えられることもメリットです。ノウハウ・技術販売は企業に限らず、個人でもIPビジネスを展開できます。
IPビジネスの主要分野と日本での成功例

IPビジネスは多くの人にとって馴染みの深いビジネスであり、日本においては重要な位置を占めています。実際にIPビジネスには以下のような主要な分野があります。
- キャラクター
- エンタメ
- アパレル・ブランド
- 芸能人・スポーツ選手
- 技術・特許
分野ごとの特徴や日本での成功例を一つずつ解説、紹介します。
キャラクター
魅力的なキャラクターを作り出し、商品化します。大きなメリットは、世の中に受け入れられ、人気を得たキャラクターによって、長期間、収益を得られる可能性があることです。また、自社で商品を作り販売するだけではなく、ライセンス販売により、低リスク、低コストで収益を得ることも可能です。
日本では、サンリオのキャラクターが成功例として挙げられます。サンリオは複数の人気キャラクターの商品化だけではなく、積極的にコラボレーションやテーマパーク運営まで行っています。他にも、ちいかわ、すみっコぐらしなども成功例です。
キャラクターでのIPビジネスで大切なのは、キャラクターの見た目の魅力だけではなく、キャラクターのバックストーリーなどを通じてエンドユーザーと感情的なつながりを持つことです。そうすることで、一時的なブームに終わらず、継続的な収益を生み出すことにつながります。
エンタメ
漫画、アニメ、ゲーム、映画などのエンタメ分野の知的財産によるIPビジネスです。人気漫画がアニメ化され、映画になり、ゲーム化もされるといった形で拡大していき、メディアが増えるごとにファンも増え、さらに相乗効果で人気が高まっていきます。
エンタメについては、昔から多くの成功例がありますが、漫画原作の「ドラゴンボール」「ワンピース」「名探偵コナン」、アニメ「ポケットモンスター」などが有名です。これらは、長期に渡って、大きな収益を生み出しています。
アパレル・ブランド
歴史ある一流ブランドをはじめとして、人気のアパレル・ブランドもIPビジネスの一分野です。一流ブランドであれば、歴史に裏打ちされたブランドの持つブランド価値が大切です。ブランドの特徴的なデザインやロゴは、重要な資産となります。
日本の成功例としては、「コム デ ギャルソン」「ヨウジヤマモト」「イッセイミヤケ」などが挙げられます。
芸能人・スポーツ選手
アイドルや歌手や俳優などの芸能人、著名なスポーツ選手、芸術家やデザイナーなど、その自分自体がブランド価値を持ち、IPビジネスとして成り立ちます。グッズや作品の販売だけではなく、ライブや出演時の放映権が収益につながります。昨今では、コラボレーション企画やブランドの顔としてのアンバサダーなどの活動もあります。
日本では、大谷翔平、村上隆、2.5次元アイドルなどが挙げられます。
技術・特許
革新的な技術や発明の特許権を活用したIPビジネスです。自社で商品を製造するだけではなく、ライセンス契約や技術提携を行うことで、さらにビジネスを拡大できます。
日本では、著名な家電製品である「ヘルシオ」「アクオス」「霧ヶ峰」などが挙げられます。
IPビジネスのメリット

IPビジネスには以下のようなメリットが挙げられます。
- 人気が高まると長期的な収益が見込める
- 宣伝効果があり、自社のイメージアップにつながる
- コストを削減できる他社との差別化を図れる
- 新規顧客獲得が見込める
一つずつ解説します。
人気が高まると長期的な収益が見込める
IPビジネスは人気が高まり、多くのファンを獲得でき、それ自体資産価値が高いものとなり、長期的な収益が見込めます。新しい商品を生産するだけではなく、漫画をアニメや映画やゲームにするなど、他のメディアやファミレスやコンビ二のコラボレーション商品へと展開することも可能です。他社にライセンス販売することによって、低コストで収益を得ることもできます。
人気のあるIPは、自社にとって大きな資産となる可能性を秘めているのです。
宣伝効果があり、自社のイメージアップにつながる
人気があり、様々なメディアに展開し、認知度の高いIPは、宣伝効果があり、自社のイメージアップにつながります。たとえば、「ハローキティといえば、サンリオだね」といったふうに、誰もが知るIPは自社の認知度を高める効果があります。また、IPのイメージが良ければ、自社のブランドイメージもよくなるでしょう。
コストを削減できる
他社のIPコンテンツとライセンス契約を結ぶことで、自社でIPを作成して人気を獲得するまでのコストをカットできるため、費用と工数共に大きな削減が可能です。既にいるIPのファンや顧客が、コラボレーションした自社の商品に対して興味を持ってくれる可能性が高くなります。
ファミリーレストランやカラオケ店などとのコラボ商品は、実際に大きな収益をもたらしています。
他社との差別化を図れる
IPコンテンツを活用することによって、同じジャンルの他社の商品との差別化が図れます。たとえば、ハンバーガーショップのブランドは複数ありますが、子どもたちに人気のキャラクターとのコラボ商品を作ることによって、選んでもらえる確率は高まるでしょう。コラボ商品をきっかけに新たなファンを獲得できることもあります。
新規顧客獲得が見込める
自社の商品をより多くの人に知ってもらい、新たな顧客になってもらうマーケティング戦略としてIPコンテンツは活用できます。IPの固定ファンが購入するだけではなく、コラボ商品は話題性があるため、SNSやメディアを通じた情報の拡散も期待できます。結果的に、商品が多くの人の目に留まり、新規顧客獲得につながります。
IPビジネスのデメリット

長期的な大きな収益をもたらす可能性があるIPビジネスですが、以下のような留意すべき点があります。
- 収益化するまでには時間やコストがかかる
- 海賊版により収益を奪い取られ、IPのイメージを損なうことがある
- IP管理、保護のコストと手間がかかる
一つずつ解説します。
収益化するまでには時間やコストがかかる
IPを生み出すことや、多くの人に認知されてファンを獲得するまでは、時間やコストがかかります。どのIPが人気を獲得できるかは予想できない面もあり、ある程度人気がでたとしても、定着させるには継続的な宣伝活動やSNS運用やコラボレーションなども必要です。そのため、すぐに収益を得たいと考える場合は、IPビジネスは不向きといえるでしょう。
海賊版により収益を奪い取られ、IPのイメージを損なうことがある
IPは法律により保護されていますが、IPを無断でコピーした海賊版のリスクは広く認知されていればいるほど、高まります。海賊版はライセンス契約を結んでいないため、自社の収益にはなりません。海賊版のコンテンツが作られた場合、本来そのコンテンツで得られるはずの収益がなくなってしまいます。
また、海賊版は品質が低いこともあり、それによってIPのイメージが損なわれてしまうこともあるでしょう。
IP管理、保護のコストと手間がかかる
前記した通り、海賊版の流通など、IPの違法な無断使用を防ぐためにもIPの管理や保護が必要となります。拡散力のあるSNSやECサイトがあるため、全てを完璧に管理や保護することは難しく、法律の専門家も時には検討することになります。
IPビジネスを成功に導くポイント

多くの企業がIP創出に挑んでいますが、全てが成功するとは限りません。長期的な収益を生み出す魅力的なIPを生み出し、育てるためのポイントは以下の通りです
- グローバル市場を視野に入れた魅力的なIPを創出する
- ターゲット分析とペルソナ設計を行う
- メディア展開の戦略を立案する
- IPと共にファンを育てていく
一つずつ、解説します。
グローバル市場を視野に入れた魅力的なIPを創出する
漫画、アニメ、ゲームなどは、日本の市場だけではなく、グローバル市場も視野に入れて、大きな収益を獲得できるように展開していくことが大切です。海外展開においては、言語だけではなく、文化の壁があるため、その点の配慮も必要となるでしょう。
ターゲット分析とペルソナ設計を行う
できる限り多くの顧客を獲得するだけではなく、ターゲットとなる層を分析して、効果的なマーケティングを実施することも大切です。ターゲットの性別、年齢、生活スタイル、趣味、職業などを設定して、彼らにどのような嗜好があるかを検討した上でコンテンツを開発します。
メディア展開の戦略を立案する
IPを育てるためには、複数のメディアを組み合わせて展開していくことが重要です。たとえば、はじめにアニメを作り、視覚的なインパクトや魅力的なストーリーでファンを獲得してから、人気が高まったキャラクターのグッズ、映画化や実写化などに展開します。
コンテンツによって、どのようなメディアに展開できるかは異なるため、IPを創出する当初からある程度先の展開を検討しておきましょう。
IPと共にファンを育てていく
IPで長期的な収益を獲得するためには、IPを一期一会にはせず、ファンや顧客のニーズに応え、新たな価値を提供し続けることにあります。また、こちらから提供するだけではなく、ファンの反応やアイデアを取り入れる姿勢も大切です。そうすることにより、ファンの満足度は高まり、IPのブランド力は強化されていきます。
まとめ

IPビジネスについて解説しました。IPとは「Intellectual Property」の略で、知的財産権のことを指し、発明や創作物など収益を生み出す、財産的に価値のあるものです。著作権、特許権、意匠権、実用新案権、商標権があり、キャラクター、エンタメ、アパレル・ブランド、芸能人・スポーツ選手、技術・特許など、多様な種類や形があります。
IPビジネスを長期的に収益化するには、魅力的なIPを作成するだけではなく、メディア展開の戦略を立て、ターゲットを分析し、グローバル市場も視野に入れる必要があります。また、ファンの声を取り入れながら、育てていくことも大切です。
企業ごとに有用なIPは異なるので、適切なIPを分析しておく必要もあるでしょう。

