コロナ禍を機に、テレワークやリモートワークが普及するなど、働き方にも多様性が重視される社会になってきました。そんななか、新しい働き方として今、注目されているのが「ワーケーション」です。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を両立させるこの考え方は、社員や職員の労働環境を向上させることが狙いですが、休暇の受け入れ先となる地方にとっても、地域の活性化につながる大きな機会となります。各自治体にとって、ワーケーション誘致は重要な事業です。
本記事では、ワーケーション誘致の方法20選を紹介。ワーケーションプログラムやプロジェクトの具体例をもとに、幅広い視点からワーケーション誘致を掘り下げています。
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受け入れ態勢の整備5選

ワーケーション誘致でまず必要なのが、受け入れ態勢の整備です。リモートワークに欠かせないインターネット環境やコワーキングスペースといった作業するための場所が整っていなければなりません。ここでは、ワーケーションの先進的な事例として知られる地域を中心に紹介しています。
ワーケーション誘致の先駆け―和歌山県白浜町
和歌山県がIT企業の招致を積極的に行っていたこともあり、白浜町は年間300万人が訪れる一大観光地としてのメリットを活かしてワーケーション誘致を積極的に進めてきました。
耐災害ネットワークの実証実験を行っており、その設備をフリーWi-Fiとして無料開放するなど、通信環境面での有利性を持っています。また、顔認証技術を活用した機能を運用し、ワーケーション施設でのドロップイン手続きの簡略化や手ぶら決済が可能です。
もちろん、ワーケーションに利用できる宿泊施設も多数あり、企業だけでなく個人に向けてもワーケーションの推進を図っています。
仕事環境の整備―北海道ニセコ町
北海道のニセコでは、ワーケーションに向けた環境整備を行っています。海外観光客がこぞってスキー場に訪れるなど世界的なリゾート地と知られているニセコですが、早くからワーケーション誘致を目的とした事業を展開した地域でもあるのです。
ニセコ駅前にあるニセコ中央倉庫群を改修し、最先端のICT環境を整備。テレワークオフィスとして無料のコワーキングスペース提供や作業室の貸し出しを行っています。
また、「ニセコ町おためしワーケーション」としてワーケーション推進プロジェクトも展開した事例も。期間限定で3泊以上のワーケーション体験してもらう施策となっていました。
心かようワーケーションで地域創生―長崎県五島市
観光地としても名高い長崎の五島列島では、2018年ごろからパソコンを持って仕事をしているノマドワーカー的な人を見かけるようになり、移住につながるための施策としてリモートワーク実証実験を開催。デジタルノマドの受け入れ強化やワーケーション誘致を積極的に展開しています。
ワーケーション誘致の施策として行った「五島ワーケーションチャレンジ」では、参加者と住民が交流を持つイベントも開催し、ワーケーションを一過性のものにさせないような工夫も行っているのです。
こういった地域の取り組みの結果、移住者が6年連続200人を超える状況を生み出しました。5年定着率も80%と高く、五島の魅力発信や地域住民の良好な関係が成果につながっています。
人材回帰モデル―北海道北見市
北海道北見市では、市内にある国立北見工業大学の学生が北見市に留まってもらうようにIT系企業の招致を行っていました。しかし、新入社員を辺境の地で育てるのは難しく、一定期間が経ってから北見市を拠点にテレワークなどで働いてもらうというモデルが誕生しました。
北見市では2015年ごろから総務省による「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参画。サテライトオフィスの効果実証や観光連動型テレワークの実証実験などを経て、ふるさとテレワーク(ワーケーション)によるIT企業との連携を深めています。
リゾートテレワークの推進―長野県
豊かな自然やアウトドアの充実など、ライフスタイルの向上を望む人を対象に、長野県は「信州リゾートテレワーク」としてワーケーション誘致に力を入れています。
予約なしで利用できる(ドロップイン)コワーキングスペースやワークスペース、Wi-Fi環境の整備など、快適に仕事を行うための環境を備えた旅館・ホテルを充実。12のエリアをモデル地域に、空き施設を活用したテレワーク事業に取り組む民間事業者を支援し、長野県内には80ヵ所以上のワーケーション受け入れ施設が用意されています。
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地域体験・観光との連動5選

自治体によるワーケーション誘致において、地域性は重要な要素になります。地域資源や観光資源を利用したワーケーションの実施が効果的です。
ジオツーリズム×ワーケーション―新潟県糸魚川市
糸魚川市には、豊かな自然があります。そんな地球の恵みを感じられる自然体験のなかで学びを得られる親子を対象にしたワーケーションを実施。それが「日本海シーサイドテレワーク」の親子ワーケーションプランです。
【プランの概要】
- 美山公園・フォッサマグナミュージアム見学
- 長者ヶ原遺跡見学
- 化石発掘体験
- 小滝川ヒスイ峡で川遊び
- ヒーリングガーデンたかなみで遊ぶ
ほかにも、防災ワーケーションやジオフードワーケーションなどのプランが用意されています。プランの内容はカスタマイズも可能です。
経営者向けワーケーション視察・体験会―長野県諏訪市
長野県諏訪市では、「SUWAーケーション」と題したワーケーション事業を本格的に展開するにあたり、2つのモニターツアーを実施しました。そのうちのひとつが経営者層に向けたワーケーションの視察・体験会です。
製造業を中心とした産業集積地であることを活用した取り組みとなっています。この地を代表する企業、セイコーエプソンの歴史館巡り、地元企業の工場見学や意見交換・交流会など、ビジネスに特化した内容です。
広域都市圏ワーケーション―長崎県
長崎県佐世保市を中心とした西九州の広いエリアに密集する9市町を対象にした周遊型ワーケーションが「YOKA Workation(よかワーケーション)」です。余暇と九州の方言「よか」をかけています。
各エリアまでは車で2時間ほど。自然や食、歴史、文化などそれぞれの地域ごとの特性を感じられるものになっています。順番やルートは自由。個性的で多様な旅を楽しめるワーケーションです。
【対象地域】
- 佐世保市
- 平戸市
- 松浦市
- 西海市
- 東彼杵町
- 川棚町
- 波佐見町
- 小値賀町
- 佐々町
参考:西九州させぼ広域都市圏「YOKAワーケーションガイドブック」(PDF)
氷のワーケーション―北海道苫小牧市
北海道苫小牧市では、「氷」をテーマにした交流会がたワーケーションを開催。雪中氷上BBQやカーリング体験、プロアイスホッケーの試合観戦など、この地ならではのプログラムを楽しむことができます。
本ワーケーションは一定の期間行われているもので、期間中はどのプログラムも参加・離脱が自由です。テレワークに関してコワーキングスペースの特別優待なども行っているほか、レンタカー24時間無料、バスカードの進呈といった特典もあります。
農業×ワーケーション―三重県尾鷲市
三重県尾鷲市の特産物である甘夏の収穫を体験できるのが「甘夏収穫ワーケーション」です。農作業を手伝うことで、都会での暮らしや働き方を見直せる機会にもなるでしょう。
期間は収穫時期に合わせて2ヵ月ほどありますが、単日参加も可能です。参加者の不安を解消するためにZOOMを使用したオンライン説明会も開催されました。
ワーケーションに関するプログラム・サービスの導入5選

実際にワーケーションを行ってもらうための施策・サービスを紹介します。ワーケーション誘致につなげるために、自治体や企業がさまざまな方法の取り組みを行うことが重要です。
人材育成型ワーケーション―島根県海士町
海士町は、島根県の日本海に浮かぶ離島・中ノ島にある町です。地域の人材育成を目的にした人材育成型ワーケーションを実施しました。
観光人材を育てるためにホテルや飲食店、土産屋や旅行会社などを対象に、島外の事業者へ研修を兼ねた宿泊プログラムでワーケーションを行う形です。ワーケーションを呼び込む地域が、反対にワーケーションを行う側になるという、ワーケーションの新たな可能性探る実証事業といえるかもしれません。
上質ワーケーション―星野リゾート
極上の空間づくりや高レベルのおもてなしで人気を博す星野リゾート。同社が運営するホテルや旅館は高級なイメージがありますが、ファミリー向けの1週間ワーケーションプランを発売するなど、ワーケーション事業も展開しています。
プランの対象はリゾナーレの5施設です。プランには、午前中の4時間に3~6歳の子どもを預かる託児サービスもついています。
【ワーケーションプラン対象施設】
- トマム
- 那須
- 八ヶ岳
- 熱海
- 小浜島
トマムや熱海には滞在中なら24時間利用可能なテレワークスペース、八ヶ岳にはデスクとソファが設置されたテレワークゴンドラ、小浜島では「パーフェクトワーケーションセット」と呼ばれるオフィス機器セットのレンタルサービスなど、ワーケーションの整備がされています。
ワーケーションサポートプラン―JAL
JAL(日本航空)では、ワーケーションに活用できるジャルパックを用意しています。
3日の休暇で旅行に行く予定が途中の1日に外せない仕事が入ったといった場合に、仕事用の日を1日つくって滞在日数を増やすことも可能です。期間によっては、1日増やしても宿泊代が安くなる場合もあります。ワーケーションプランで気軽にワーケーションを行えるでしょう。また、カード限定でコワーキングスペースを特別価格で利用できるプランも用意されています。
JALは会社の制度としてワーケーションを導入していますが、さらにビジネスとレジャーをかけ合わせた「ブリージャー(ブレジャー)」を導入。これは、出張の前後に休暇がつけられる制度です。観光庁でも新たな旅のスタイルとして注目しています。
参考:国土交通省観光庁「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー
空き家の再生―LIFULL
不動産情報サービス事業を展開するLIFULLは、地方創生事業のひとつとして、空き家の再生に取り組んでいます。
社会問題にもなっている空き家をワーケーション施設や多拠点生活などに活用すべく空き家のデータバンクやコミュニティの開発・運営を展開。多くの自治体を支援している会社です。テレワークやワーケーションといった働き方の推進に役立っています。
企業のワーケーションをサポート―HONPRO
HONPROは、ワーケーション推進事業を行う企業として、企業や自治体のワーケーション実施をまるごとサポートするサービスを行っています。
プログラムの企画から実施に向けたプロセス、滞在プラン、ワーケーション施設の紹介など、一挙に引き受け。さまざまな事業者や自治体のワーケーションに関わっています
- SDGs研修ツアー(チームビルディング型)
- 島のテレワーク(福利厚生型)
- ワーケーションフェス
- お試しワーケーション
- 親子参加型移住体験
子育て世代向けプログラム5選

子育て世代に向けたワーケーションがあります。ワーケーションの概念や言葉は浸透してきましたが、実際に企業がワーケーション制度を取り入れるとなると、まだまだ理解されていない部分も多いです。そういった課題から、子育て世代に訴求するワーケーションの実証事業が多く行われています。
親子プログラム「ラーケーション」―Edo
教育事業に取り組むEdo(所在地・岐阜県飛騨市)では、トヨタの社員家族を対象にしたラーケーションを行いました。
ラーケーションとは、ラーニングとバケーションをかけ合わせた言葉で、児童や生徒が平日に学校を休んで保護者と一緒に学習体験活動を行えるようにする制度です。
この制度を活用し、親子ワーケーションを実施。森を散策したり、製材所を見学したり、飛騨牛を堪能したりと、地元・飛騨の歴史や文化や地場産業ついて触れる施策となっています。
農村体験ワーケーション―農ライファーズ
農ライファーズは、広島県竹原市で農業や店舗、農体験宿を営んでいます。農体験宿の経験を活かし、企業向けに合宿型ワーケーションプログラムを実施。親子で行うプログラムもちろん、親と子それぞれに向けたものも用意されているようです。
| 親向けプログラム | 子ども向けプログラム | 親子プログラム |
| ・リスキリング研修 ・キャリア教育サポート ・事業コンサルティング ・チームビルディング | ・畑や田んぼの農業体験 ・自然遊び ・田舎料理づくり ・ドーナツづくり | ・地元の料理を堪能 ・サウナミスト体験 ・夕食づくり ・地域観光 |
保育園留学―キッチハイク
教育や食に関する事業を展開するキッチハイク(所在地・北海道厚沢部町)は、子育て世代が地方の暮らしを体験できるワーケーションプログラム「保育園留学」を展開しています。
世帯ごと、長期の滞在を行い、子どもは短期移住先の保育園、親はリモートワークという内容です。子どもを自然のなかで育てたいと考えるケースも多く、短い間でも「経験」としてその願いが叶うような施策となっています。
期間は1~2週間のベーシックプランと3~4ヵ月の長期留学プランを用意。留学先は、北海道をはじめ全国各地に65ヵ所あります。
親子地方留学―雨風太陽
岩手県花巻市に本店を構える雨風太陽では、食品や旅行事業などを行っています。その事業のひとつが親子地方留学です。留学先まで親子で行き、日中は親子で分かれて滞在します。親はリモートワーク、子どもは生産者のもとで自然を学ぶといった具合です。
留学先の地域や生産者もさまざまで、全国9地域のなかで、農家や漁師、ハンターとの鹿猟体験なども展開しています。プログラムの期間は1週間で、夏休みに開催されるようです。
親子で過ごす福井暮らし体験―福井県福井市
福井市では、親子を対象にしたワーケーションを実施。子育て世代が住んでいる地域を離れ、福井に滞在するプログラムです。
期間は1~3週間ほどで、子どもは小学校や保育園への体験入学・入園という形になっています。福井は教育水準の高い「教育県」として有名なので、子どもによい影響を与えてくれそうです。
まとめ
ワーケーション誘致の方法20選をまとめました。特に自治体はワーケーションに熱心に取り組んでいます。それは、ワーケーションが少子高齢化や人口減少、地域の衰退といった問題を解決する助けとなることを期待しているからです。ワーケーションプログラムも、そういった地域創生・地域活性化を考慮した内容になっています。
環境の整備や人材育成、地域・観光資源の活用、子育て世代に訴求するものなど、多種多様なワーケーション誘致の方法が確認できる記事です。本記事を参考に、ワーケーション誘致に活用してください。
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