近年、日本ではインバウンド需要の高まりが顕著になっています。コロナ禍が明けて以降、訪日外国人旅行者の数は驚異的な回復を見せ、2025年では推計値が過去最高を更新する水準にまで達しました。国内のサービスは、訪日外国人旅行者に対応することで売上を大きく伸すことを期待できます。事業者にとって、インバウンド向けの集客戦略は非常に重要です。
本記事では、インバウンド集客の方法20選を紹介しています。訪日外国人旅行者に対する集客戦略について、成功事例をもとにその方法をタイプ別にまとめました。
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基本方法5選

ここでは、インバウンド集客の方法について、入口となる基本的なものを紹介します。デジタルを活用したものが中心で、訪日外国人旅行者へ向けた施策の「第一歩」です。
多言語Webサイトの整備
訪日を考えている外国人旅行者に向け、自社の持つサイトを多言語化することが重要です。今の時代、情報収集はGoogle検索が中心なります。外国人が検索した際にヒットするよう、多言語で内容を伝えるページを用意しましょう。対応言語は、英語・中国語・韓国語の3種類が一般的です。
Googleビジネスプロフィールの最適化
訪日外国人旅行者にとって、Googleマップは重要な観光ツールです。Googleマップを使用する際に表示される店舗のプロフィールに英語の表記も加えれば、来店率の向上が期待できます。
また、口コミに対する返信も英語で行うことが重要です。特に、宿泊施設では口コミが予約状況に大きく影響すると考えられており、訪日外国人に効果的でしょう。
ハッシュタグ戦略
SNSはインバウンド集客に欠かせないツールです。いまやSNSは検索ツールの側面を見せ、旅行の情報源として活用されています。そこで有効なのがハッシュタグです。検索性が向上するため広告効果や来客の導線につながることを期待できます。
SNSのなかでも、Instagramやフェースブックが効果的です。岐阜県高山市は、Facebookのハッシュタグを利用した観光プロモーションで大きな成果を獲得しました。また、舞妓に変身できる京都の撮影スタジオ「四季」はInstagramのハッシュタグ集客の成功事例として注目されています。
体験を動画で発信
動画の発信は、広告やプロモーションにおいて重要な方法になります。特に、外国人に向けてその魅力を伝えるのに、言語の壁を超える動画は非常に有効です。
実際、地方自治体でインバンド動画による施策は多く行われており、福岡県北九州市の関門海峡PRムービー「COME ON!関門!」は再生回数が2億回以上となっています。また、島根県出雲市の観光PR動画は、言葉に頼らない構成で公開から2週間で550万回、トータル1200万以上の再生回数を達成しました。
OTAの掲載
OTAとは、オンライン・トラベル・エージェントの略で、インターネット上だけで、宿泊や航空券の手配といった旅行に関する手続きを完了させられる旅行代理店のことです。
外国人旅行者はOTAを利用することが多く、インバウンド集客の方法として注目されています。海外のOTAに施設を掲載することで訪日外国人観光客を呼び込めるでしょう。
【主要な海外OTA】
- Booking.com…世界最大級のOTA
- Expedia…Hotels.comやTrivagoなどを傘下に持つ
- Viator…北米やイギリス、オーストラリアなど英語圏に強い
- GetYourGuide…アクティビティや現地ツアーが豊富
- Trip.com…中国(中国ではCtripの名称)で圧倒的なシェアを持つ
- KLOOK…アジア最大のOTA
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店舗・施設での方法5選

実際の店舗や施設で行うインバウンド集客の方法について紹介します。訪日外国人観光客に対する受け入れの強化がメインです。
多言語メニュー・案内板
訪日外国人観光客に対して多言語対応することが重要です。観光庁でも、観光立国実現に向け、多言語対応の改善・強化を推進しています。観光庁が策定したガイドラインをもとに、メニューや案内板を多言語対応に取り組むことが大切です。
メニューの多言語対応を展開した浅草のお好み焼き・鉄板焼店「つる次郎」は、訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」が開催した人気ランキングアワードにてグルメ部門の1位に輝き、英語が話せるスタッフがいないにもかかわらず、1日20組以上の外国人が訪れるような人気店となりました。
参考:観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」概要(PDF)
キャッシュレス決済の対応
海外ではキャッシュレス化が進んでいます。そんな環境に暮らす外国人にとって、キャッシュレス決済ができる店舗や施設は意思決定の大きな要素になります。自国で使用している決済サービスが利用できるなら、なおさらです。
通常のクレジットカード・デビットカード決済のほか、それぞれの国の特徴に合わせた決済サービスを導入すると店舗や施設ならではの強みとなるでしょう。特に旅行消費額の多い、中国・台湾・韓国を対象にすると効果的です。
【国別の主要な決済サービス】
- 中国…WeChat Pay・Alipayなど
- 韓国…Never Pay・Kakao payなど
- 台湾…悠遊カード/Easy Card(交通系ICカード)
- 欧米…Apple Pay・Googleウォレット
フリーWi-Fiの提供
現代の旅行においてインターネットへの接続は、必要不可欠なものです。キャッシュレス決済、検索、地図の確認、翻訳など、まさに旅先のライフラインと言っても過言ではありません。
プリペイドSIMや海外旅行時のローミングが基本使用料に含まれているといった環境の変化もありますが、使用できるデータ容量には制限があるので、フリーWi-Fiの需要は高いでしょう。また、通常の日本人客にとっても便利なので、店や施設自体のサービス向上や顧客満足につながります。
免税対応
免税制度は、購買意欲を促進させる要素になります。インバウンド集客の方法として免税店登録も有効な手段のひとつです。
ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」は免税対応によるインバウンド売上が増加しています。ただ、2026年から免税制度の方式が変わり、店側の対応や負担にも影響が出るでしょう。
その一方で、免税対象の限度額の撤廃や許可要件の緩和などが行われるので、チャンスとなる可能性もあります。メリット・デメリットを吟味して判断することが大切です。
食の多様性対応
外国人観光客にとって、飲食店選びは重要です。ただ「おいしい・まずい」だけではなく、ムスリム(イスラム教徒)やヴィーガンといった価値観・宗教性に結びつくケースも少なくありません。
世界のムスリム人口や約20億人といわれています。また、ベジタリアンやヴィーガンも増加傾向にあり、食の多様性に対応することでインバウンド集客につながることを期待できるでしょう。また、ムスリムやヴィーガンに対応した食事は健康的であると一般客からの注文が増える場合もあります。
店舗や施設独自の特徴、個性、武器として差別化を図ることにもつながる施策です。国もフードダイバーシティ対応の取り組みを推進しています。
参考:観光庁「ベジダリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(PDF)
体験・コンテンツに関する方法5選

その国でしか体験できないことには大きな価値があります。日本独自の文化や習慣に根ざした体験・コンテンツを提供することで訪日外国人旅行者の興味を引くはずです。実際に足を運ばせるためには、アイデアや質が重要になるでしょう。
外国人向けワークショップ
日本ならではの料理や文化について学習体験できるコンテンツは、訪日外国人旅行者に人気が高いです。寿司づくりや蕎麦打ちといった和食のワークショップや茶道、書道のような文化的な体験まで、外国人に向けたこのようなワークショップの事例は多く見られます。
ワークショップの内容を選択する際には、以下の点が重要になります。
- シンプルでわかりやすい
- エンターテインメント性
- SNS映え
コスプレ・なりきり体験
コスプレ文化の認知・発展により、日本の伝統的な衣装を身にまといたいという需要も少なくありません。着物や忍者、武士(甲冑)への変身はSNSとの相性も良く、訪日外国人旅行者に好まれる体験イベントになります。
チェーン展開している忍者体験カフェでは、手裏剣・吹き矢・刀の武器修行を行えたり、サムライ体験ができるイベントサービスでは、本人を360度で取り囲む20台のカメラによる撮影や甲冑を来たまま町を歩く体験ができたりと、さまざまです。
地域体験ツアー
特定の地域を、何かを体験しながら巡るツアーも注目されています。例えば、食べ歩きツアー。東京・京都・大阪などでディープな居酒屋や下町情緒あふれる商店街を散策する食べ歩きツアーがあります。
また、土地柄を活かした食べ歩きツアーも存在。築地では市場の見学と寿司握り体験がセットなって展開し、大阪では通天閣や新世界の世界観を楽しみながらグルメツアーとして屋台を巡ります。ほかにも、京都・伏見の酒蔵を見学しながら日本酒の利き酒を体験できるツアーも人気です。
ナイトタイムエコノミー
欧米で定着しているナイトタイムエコノミーを推進する動きが国や自治体で見られます。観光庁は、ナイトタイムエコノミー推進に向けたナレッジ集を公開し、東京都がナイトタイムエコノミーを戦略的に取り組むことを明言しました。
沖縄では、那覇市の国際通りで夜間イベントやパフォーマンスが積極的に開催されているといいます。また、首里城公園を中心に夜間の消費を活性化さえる施策も検討されているようです。ほかにも、地域資源を活用した長野県那智村の「星空ナイトツアー」や夜の賑わいを取り戻すべく、音と光の演出で町を周遊する、「夜の街歩きコンテンツ 迂回ラジオ」など、文化やまちづくりと連動した施策もあります。
ポップカルチャー体験
日本の伝統的文化が世界から尊敬を集める一方で、マンガを筆頭とした日本発信のポップカルチャーも高く評価されています。訪日外国人旅行者にとって、ポップカルチャーは大きな魅力となるでしょう。それを証明するかのように、インバウンド集客の方法として、ポップカルチャーに関連するツアーやイベントも多くなっています。
聖地・秋葉原をコスプレガイドと散策できるツアーがあります。ツアーといえば、聖地巡礼も人気です。アニメ「君の名は。」の岐阜県高山市や「サマーウォーズ」の舞台となった長野県上田市が成功例として知られています。また、直接的な言及はありませんが、「鬼滅の刃」に登場する藤をイメージする場所としてあしかがフラワーパークが注目されているようです。
ユニーク事例5選

ここでは、アイデアに優れた方法やユニークな内容の事例を紹介します。特別なIPや観光・地域資源がなくても勝負できる可能性があります。あるいは、ひとつの強力な特化したり、いくつかの要素を組み合わせることでテーマ性や物語性を打ち出したりといったものです。
ロボットレストラン
巨大なロボットをシンボルに、ダンサーたちが展開する熱狂のショーを見ながら食事を楽しむアミューズメントスポットが「ロボットレストラン」です。派手な電飾とアニメやゲームのような世界観が異次元空間を創出。その独特な非日常性が注目を呼びました。
店内やショーの様子をSNSに投稿したことがきっかけとなり、海外で話題になると、多くの訪日外国人観光客が訪れる人気スポットに。その後は、インバウンド集客のビジネスモデルに方向転換し、大きな成功を収めたのです。
コロナ禍による休業をはさんでリニューアルオープン。サムライレストランに名称が変更された現在は、鬼・侍・神輿・祭りをイメージした日本文化を全面に打ち出したパフォーマンスが展開されています。
マンガ・アニメワークショップ
訪日外国人観光客に向けた日本の文化体験のなかに、マンガやアニメの制作ができるワークショップがあります。プロのマンガ家などが指導しながら、実際にマンガを描ける内容となっています。用具も本物が用意されている本格的なものです。
そのほかにも、アニメをつくれるワークショップやアニメ声優体験などのプログラムもあります。
相撲部屋朝稽古ツアー
外国人に人気の相撲。本来なら両国国技館などで本場所を観戦しますが、相撲部屋に朝稽古を見学に行くユニークなツアーとなっています。
相撲の歴史やルール、稽古の説明などを英語でガイド。本場所とは違い、間近で迫力ある取組を見られることが魅力です。
インバウンド専用特別列車に日帰りツアー
意外にも、JR東海としては初の試みとなるインバウンド専用特別列車を運用した日帰りツアーが行われました。その名も「富士山と静岡のわさび堪能ツアー 北斎特別列車&新幹線付き」。あえて雑多な雰囲気にしている、そのままのタイトルがいかにも外国人観光客向けです。
列車は美術館をテーマに、葛飾北斎の富嶽三十六景に関連する絵が展示されています。富士と浮世絵にザ・和食のわさびを合わせ、新幹線にも乗れる至れり尽くせりのツアーです。
ローカルガストロノミーツーリズム
世界に名高い日本食を求め、世界中から美食家が集まります。外国人観光客でも富裕層を視野に入れたインバウンド集客の方法のひとつがガストロノミーツーリズムです。
しかも、東京や大阪といった大都市ではなく、過疎化の進む地方の田舎に佇むレストランやオーベルジュが対象になることも少なくありません。しかし、自然と食、風土、土地の雰囲気や歴史をじっくり味わえる、贅沢な時間を過ごせるものとなっています。
インバウンド集客のポイント

- 多言語化
- 体験価値
- デジタル活用
この3つが、インバウンド集客の方法には重要です。ただ、それぞれを単独で行っても思うような効果が出ない場合もあります。特にデジタルの活用に関しては、「ネット広告」や「SNS投稿」だけで終わるのではなく、それらを入口に予約や来店につながるような仕組みをつくることが大切です。
多言語化・体験価値・デジタル活用の3つの要素を組み合わせ、お互いが補完するような形になれば、より効果的な集客方法となるでしょう。
まとめ
インバンド集客の方法についてまとめました。基本的な施策をはじめ、店舗や施設のケースについて言及したものや体験・コンテンツ、日本ならではのユニークな事例といったテーマをもとに、20の方法を紹介しています。多言語、検索性、ハッシュタグ、動画発信といったデジタル方面に関する方法はベースとして共有したい内容です。また、店舗や施設の設備を整えることが重要になります。キャッシュレスやWi-Fi、食の多様性など、現代には欠かせない要素といえるでしょう。
もちろん、提供するサービスやコンテンツの中身も重要です。日本文化に関するワークショップやコスプレ体験、地域の特性、ポップカルチャーなど「体験」の質がカギを握ります。ユニークなインバウンド集客の事例を見ても、そのことがうかがえるでしょう。
インバウンド集客のポイントは多言語・体験価値・デジタル活用です。そこを意識しながら方法を考えることが大切になります。本記事を参考に、インバウンド集客の方法について検討してください。
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